一つの答え合わせ

以前、私がフリーランスであったころ、私のキャリア戦略と、SharePoint MVP 受賞専門家からの熱烈なオファーを断ったこと (参照) について投稿しました。
そのうえで、私は、新しい道に進むことを選択したことをお伝えしました。

ついこの間、その一つの答え合わせとなることがありました。

入社後まもなく勧誘した彼に会った

私が企業に入社して間もなく、あのとき私を熱心に勧誘してくれた彼と、再会する機会がありました。
以前より、彼も過去に今の私の勤務先で働いていたことがあったと聞いていました。
この日、彼は私にこう言いました。

「あの会社は、ヘッドカウントさえあれば誰でも取るよ」

私自身、今回の採用に至るまでには、実は 2008 年から転職エージェントを通じてアンテナを伸ばしており、この会社で「今季に仕様解析に強いフルスタックエンジニアを増員」という計画が出たうえで、今がチャンス、と思っての決断でした。

このやりとりを通じて、以前に感じていた違和感を思い出しながら、改めて彼との価値観の違いを実感しました。
これまで彼から、「戦略」や「目標」といった、行動や決定の指針となる言葉を聞いたことはほとんどありませんでした。目の前の動きや「今どうするか」にばかり意識が向いていて、その先の方向性や展望が見えてこず、戦略というものを意識していないのではないか、と感じていたのです。

偶然の再会と、あの日の決断の答え合わせ

さらに後日、会社のエレベーターに乗っていると、彼と鉢合わせました。どうやら、うちの営業部門が主催しているセミナーのようなイベントに参加していたようです。

ほんの数分の立ち話でしたが、彼の近況を聞くことができました。

あれから 2 年以上が経っていますが、彼は今も私とかつて一緒に働いていた頃の会社で業務委任契約の形で一般的な常駐契約社員として下流工程の業務に携わっているとのことでした。技術支援の現場にいるというより、運用や作業に追われる日々が続いているように見えました。

会話の中では、以前と変わらず「彼らは○○がダメだ」「私の役割がずれている」といった批判が多く、前向きな話はあまり聞こえてきませんでした。かつて語っていた「技術コンサルとしてやっていく」という構想が、今どうなっているのかは、正直なところ伝わってきませんでした。

もちろん、彼が技術に対して強いこだわりと情熱を持っていることは知っています。SharePoint コミュニティを立ち上げ、セミナーに登壇していることも把握していましたし、スライドの冒頭で「私は SharePoint しかやりません」と毎回強調していました。ただ、彼のブログには今年 SharePoint MVP を再受賞した、というポストは見られませんでした。

そして、以前と違うと感じたのは、彼があまり私と目を合わせなくなったこと。短いやり取りの中にも、どこか張りつめたような空気が漂っていて、少し心配になりました。

私は以前の記事でも触れましたが、SharePoint はクラウド化を経て、明らかに勢いが落ち着きつつあると感じています。ITではすでに基幹システムの次であるエンタープライズコミュニケーション系製品の導入が中心ではなくなり、複数のサービスや分散化された構成に中心が移ってきました。Microsoft 自身も OS/Office ではなくデバイス&サービスだと言っています。そうした中で、かつての専門性をそのまま維持することには、ある種の危うさも感じてました。

彼は、かつての自分の「強み」にすがっているのではないか──そんな印象を受けました。技術力だけで勝負するには足りないこともよく知っていますが、発信力や行動力を絡めると非常にアクティブなので、おそらく「やりたいこと」を捨てて、ゼロベースで考えてみれば好転する気がしています。それでも、目の前で「もっと新しい領域に挑戦してみては?」とは言えませんでした。

あの日、もし私が同じ道を選んでいたら、今頃どんな姿になっていただろうか。。。

キャリアには、「やりたいこと」「なりたい自分」だけでなく、視野と選択が問われるということを、改めて実感した再会でした。

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