SharePoint MVP からの熱烈な勧誘を断った理由とキャリアビジョン

先日、同じプロジェクトにいた SharePoint MVP を受賞し、法人を立ち上げた知人から、「うちの会社に入らないか?」と 3 時間にわたる熱烈なオファーをいただきました。SharePoint に長く関わってきた私にとって、同じ領域の専門家からの評価はとても嬉しいものであり、誇らしくもあります。
ただ、結論から言うと、私はその申し出をお断りしました。
お断りしたのは、感情的な理由ではなく、「方向性の違い」を強く感じたからです。今回はその経緯をもとに、SharePoint 関連業界の展望、私自身のキャリア戦略、そして最終的にお断りした理由について、率直に書いてみたいと思います。

SharePoint 関連業界の展望

この3,4年間はまさに「SharePointブーム」ともいえる状況で、多くの人が SharePoint の技術を探索していく中で、先に走り出た少数の個人がブログでもてはやされ、「技術コンサルティング」を名乗って独立ブームとなってきた感があります。
その「技術」とやらの中心は、SharePoint を活用するというよりは、むしろカスタマイズや開発という、個人の趣味の延長としか思えないものが多数を占めています。
しかし、私の目には今の状況が「雨後のたけのこ」のようにも映ります。流行はいつか落ち着くものです。Notes のように、一時代を築いた技術でも「これ一本」で走り続けられたものはありません。

そして、現在は様々な分野でクラウド化が推進されていて、SharePoint や Exchange についても BPOS という Microsoft のクラウドサービスが出てきました。SharePoint は、これからオンプレミスよりもクラウドが主流になっていくと踏んでいます。
そうなってくると、SharePoint も例外ではなく、いずれは技術はコモディティ化し、利活用を中心とした、価値を提供できる人だけが残っていく領域になると私は見ています。

自分のキャリア戦略について

現在まではフリーランスとして活動してきました。しかしその立場は、技術支援という名目ではあるものの、実際に関わるのは開発や構築などの作業工程が中心で、いわゆる下流工程に偏りがちです。そのため、経営課題へのアプローチや、ビジネス課題に対して IT のソリューションを提供するといった、上流の思考プロセスに踏み込むのが難しい場面も多くありました。
「知」というものは、一つのことを徹底して追求することでも生まれますが、異なる分野の組み合わせからも生まれるものです。しかし、フリーランスという立場では、どうしても得られる情報や視点が限定されがちで、多方面からの知識を体系的に吸収する機会が限られてしまいます。

キャリアにおいて、「やりたいこと」を追求することは一見魅力的ですが、私はその先にある“選択肢の狭さ”が気になります。
技術の世界は変化が激しく、今やりたいことが、5年後、10年後も自分にとって価値あるものかはわかりません。そして、私がこれから判断していくことには、当然「未知の事」のほうがより多く含まれるはずです。
いま、自身がアドバンテージを取れる分野があったとしても、それに執着するのは危険なことです。
将来の“未知”を前提とし、「右にも左にも動ける環境」を重視すべきと考えています。
独立が悪いとは思いませんが、それが「やりたいことを実現する素晴らしい事」であるとは限りません。むしろ、選択肢を狭めることになりかねないと私は考えています。
今までフリーランスとしてやってきて学んだことは、柔軟であること、方向転換が可能な状態であることこそが、キャリア設計では重要です。

勧誘を断った理由

今回なぜそのオファーを断ったのか、率直に書きます。
まず第一に、彼のビジョンに共感できなかったことが大きいです。彼の語る夢や展望は、あくまで “自己顕示の延長” に感じられました。特に、競合する分野のエンジニアに対する批判が多く、その批判も「偉そう」等主観的なものでした。
また、彼の構想は「技術コンサル業務」に特化した内容でしたが、それが彼個人の自己顕示的な願望に強く寄っており、会社としての展望が見えなかったのも不安材料でした。彼の話からは、自分のアドバンテージをより強く前に出したいように見え、しかし実現方法の導出や検証等の作業に埋もれてしまうのを嫌がっていたため、それができる人を探していただけのように感じました。
確かに私は彼の知らない情報を多数持っていましたが、それは研究の上で知ってたにすぎず、その結果的なアドバンテージだけを生かしてやっていこうとは思っていません。
ついでに正直に言えば、さらに次のステップを考えたとき、「従業員2名の会社で働いていました」としか語れないのは厳しいと感じたのも事実です。
残念ながら彼の考えは、私の先に上げたキャリア戦略には刺さりませんでした。
実際、私は今、大手企業との話が上がっており、先のキャリア戦略も話したうえで、より多くの選択肢と未来の広がりがある選択肢に進む方向でおります。

今回のことは、かねてからずっと考えてきた自分のキャリア戦略をまとめるよいきっかけとなりました。「キャリアの本質」を考えたとき、自分にとって何が重要かを明確にすることができると思いました。

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